静物

君はそこにあった まだ、どうかすると 雪なんか降ったかもしれない頃、春 君はここにある。今 聞こえてくる水音。 夜が静かに春を震わせて 少しずつ境界を溶かしている 窓を開けているからよくわかる 今日 おれは君をうたう 君…

空気

信じられない、もう終わるのよ。もうすぐ七十歳になるそのひとが、相変わらずからっとした声で言った。 せまい事務机の上で請求書だか領収書だかの小さな束を揃えながらそのひとはまた、こんなことにまきこまれてさ!気がついたら子ども…

しんせんのそんさん

孫さん、昼はなにするの。 「せんたく!かいもの!いっかい帰って、また来てごはん作る!土日は来ないよ!」 孫さん、娘さんもこの工場だっけ。 「そうよ!部屋いっしょ!」 今日の夜はなに? 「麻婆豆腐よ、すきでしょう!あなたは…