風媒花

わたしの一切がわたしの全身全霊があなたの何にも触れ得ないあなたからの何をも聞き得ない そういうあり方のあなたをわたしたちが見ている あなたは何処にどうしているのか おうい。どうしている どうしている おうい。 おうい。

居ました

今は昔ですここはあるところですそれはあったことです 昔々今わたしがここに居るあるところに居ます。居ました おじいさんおばあさん 今あなたがここに居るところです今居ました。居ます かにさんおさるさん 今のところ居ました き…

エンジン

ものに心があることは、オートバイのアクセルを思い切りひねって叫んだことがある人なら誰でも知っている

花は、知らせるものだ。花は、呼ぶものだ それは言葉によらないから、人の目にはそれが語りかけそのものに見える。語りかけそのものだから、何と語りかけているかは花よりもそれを見る人の中に生まれる。人はそれに言葉を充てずには居ら…

人形

死んでしまった友達の、切実で短くて曖昧な忠告の言葉をいつまでも抱えて、その切実さに応えうる回答をどうにか出そうとしていると、そのうち答えが出てしまう。自分の頭が生み出せる程度の答えが出てしまう。それは偽の回答であると思う…

友達へ

かのひとは 歌ではなくかのひとは 空ではなくかのひとは 土ではなくかのひとは 水ではなくかのひとは 風ではなくかのひとは 花ではなくかのひとは 森ではなくかのひとは 町ではなくかのひとは 光ではなくかのひとは 時ではなく…